介護士の悲鳴「素手介助」はハラスメント?尊厳と安全を守るために今すべきこと

介護現場のおはなし

こんにちは。介護福祉士のケイです。

少し前の話ですが、Twitterを見ていたら、いまだに素手での排泄介助、入浴介助を求めてくる介護施設の話が盛り上がっていました。

たしかに私が以前勤務していた介護施設でも素手で入浴介助をしていました。排泄介助は手袋を着用していましたけどね。

しかし、今の職場では排泄介助、入浴介助ともに手袋を着用しての介助を行うよう指導されています。私も後輩職員に手袋を着用しての介助がスタンダードであると言っています。

今日はこの、素手での介助についてブログ記事にしようと思います。

そもそも素手で他人の陰部をさわるのは誰だって嫌!

私が今まで勤務していた介護施設では、排泄介助時は手袋着用でしたけど、入浴介助の時は素手で利用者の体を洗っていました。

今働いている介護施設は違いますけどね。今働いている介護施設は、排泄介助、入浴介助ともに手袋着用です。

感染症(BC型肝炎や梅毒など)がある方は、すべての介助において手袋着用していましたけどね。

でも、感染症を持っていない方であったとしても、他人の陰部を素手でさわるのは嫌ですよね。私は排泄介助の時は手袋着用が当然だと思っていました。

入浴介助も陰部を洗いますが、タオルで洗浄し、陰部を洗ったお湯が自分の手にかからないように工夫はしていました。

自分としては、排泄介助は特に排せつ物が自分の手にかかるのが嫌だったので、手袋着用は当たり前だと思っていましたし、いまだに素手で排泄介助を行う介護事業所があるという投稿をみて驚きました。

私が今現在働いている介護施設、当時働いていた介護施設、ともに素手で排泄介助をする人、していた人はひとりもいません。だって素手で他人の陰部にふれたり、排せつ物をさわるのは嫌ですからね。

「まるで汚いものをさわるかのようで失礼だ」という声は無視!

中には、「手袋をして介助するなんて、まるで汚いものをさわるかのようで失礼だ!!」という人がいるみたいです。

私はあったことがありませんが、Twitterではこのように言われたことがあるという投稿がされていました。

手袋をして介助に当たるということが失礼なんでしょうか?私には理解できません。

そもそも、素手で陰部や排せつ物にふれるよう強要してくる人はまともな人間ではないと思います。

自分の親族の排せつ物であったとしても、素手ではさわりたくないのに、なぜあかの他人の陰部、排せつ物を素手でさわらないといけないのでしょうか。

理解できません。

利用者の家族で「うちのおじいちゃん、おばあちゃんは汚くない!!」とか言う人がいるのでしょうか?だとしたらあまりにも非常識すぎで衝撃です。

排せつ物は汚いですし、介護士をなんだと思っているのでしょうか。

そんな非常識な人の言うことは無視でOKです。

素手で陰部を触られることの方が不快では?

そもそも、素手で他人に身体を触られることの方が私としては抵抗がありますね。

車椅子の移乗や食事介助なら話は別ですが、入浴介助、排泄介助で素手で肌を触られることのほうがよほど気になります。

特にデリケートな陰部を素手で他人に触られるのは嫌なのではないかと思います。少なくとも私は嫌です。

自分の親や子に介護されることになったとしても、素手ではしてほしくないですね。

スタンダードプリコーション(標準予防策)

ここで、病院でひろく一般的に行われている、スタンダードプリコーション(標準予防策)についてみていきましょう。

スタンダードプリコーションとは、感染症の有無に関わらず、すべての患者に対して行う感染予防策のことです。

汗を除くすべての血液、体液、分泌物、損傷のある皮膚・粘膜は感染性病原体を含む可能性があるという原則に基づき、手指衛生や個人防護具(マスクやガウン他)の着用など感染リスクを減少させる予防策を示しています。

スタンダードプリコーションの目的は、患者と医療従事者双方における病院感染の予防です。

病院感染とは、医療機関で治療・介護を受けている患者が、医療行為や環境等を通じて感染する感染症のことです。

病院感染は、患者の重症化や死亡、医療従事者の業務上の感染につながる可能性があります。

スタンダードプリコーションの具体的な内容は、以下の10項目にまとめられています。

手指衛生
個人防護具の着用
呼吸器衛生
患者の配置
患者ケアに使用した器具の処理
環境の維持・管理
リネン類の取り扱い
安全な注射手技

手指衛生は、スタンダードプリコーションの基本であり、最も重要な感染予防策です。手指には、目に見えないほど小さな病原体が付着している可能性があります。手指衛生を適切に行うことで、病原体の拡散を防ぐことができます。

個人防護具の着用は、手指衛生では防ぎきれない病原体の感染を防ぐために行います。マスクやガウン、手袋など、患者と接触する可能性のある部位を覆うように着用します。

呼吸器衛生は、咳やくしゃみなどの呼吸器分泌物から出る飛沫による感染を防ぐために行います。マスクを着用したり、ティッシュで口と鼻を覆ったりして、飛沫を飛ばさないようにします。

患者の配置は、感染性の高い患者と感染リスクの低い患者を分けて配置することで、感染の拡大を防ぐための方法です。

患者ケアに使用した器具の処理は、患者の血液や体液が付着した器具を適切に処理することで、感染の拡大を防ぐための方法です。

環境の維持・管理は、清潔な環境を保つことで、感染の拡大を防ぐための方法です。

リネン類の取り扱いは、患者の使用済みリネン類を適切に処理することで、感染の拡大を防ぐための方法です。

安全な注射手技は、注射による感染を防ぐための方法です。

スタンダードプリコーションは、医療従事者が日常的に行う基本的な感染予防策です。すべての医療従事者が正しく理解し、実践することで、病院感染の予防につながります。

病院ではこれくらい厳重に医療従事者の感染対策がとられています。

介護施設でも、介護士を感染から守るために、スタンダードプリコーションの考え方が普及してくれると良いですね。

コスト削減のためだったら論外!ハラスメントでは?

近年、介護事業所におけるコスト削減の風潮が強まり、その影響は現場の介護士にも及びつつあります。特に深刻なのが、介護に使用する使い捨て手袋の使用数を抑えるようにという指示です。

使い捨て手袋は、感染症予防や利用者様の安全を守るために必要不可欠なものです。介護現場では、排泄介助や食事介助など、体液や汚物に触れる機会が多く、使い捨て手袋を着用することで感染リスクを大幅に減らすことができます。

しかし、事業所によっては、コスト削減のために使い捨て手袋の使用数を制限しているところがあります。具体的には、「1日に3枚までしか使用してはいけない」「利用者様の状態が安定している場合は、手袋を着用せずに介助を行うこと」といった指示が出されています。

このような指示は、介護士の安全と健康を軽視し、利用者様の尊厳を損なう行為です。使い捨て手袋の使用を制限することで、以下のような問題が発生します。

感染リスクの増加: 手袋を着用せずに介助を行うことで、介護士や利用者様が感染症に感染するリスクが高まります。
皮膚炎などの健康被害: 手袋を着用せずに汚物に触れることで、皮膚炎などの健康被害が発生する可能性があります。
介護士の負担増加: 使い捨て手袋の使用を制限することで、介護士はより多くの時間と労力を感染対策に費やす必要があり、負担が増加します。
利用者様の尊厳の喪失: 手袋を着用せずに介助を行うことは、利用者様の身体的な尊厳を損なう行為です。

介護事業所の経営状況は厳しいかもしれませんが、コスト削減のために介護士の安全と健康、そして利用者様の尊厳を犠牲にすることは許されません。使い捨て手袋の使用数を制限するような指示は、介護士への虐待、ハラスメントであるとしか言いようがありません。

介護事業者には、介護士と利用者様の安全と健康を守るために、必要な物資を十分に供給する責任があります。そして、行政には、このような問題が起きないように、介護事業所への指導監督を徹底してもらいたいと思います。

私たちは、声を上げ続けることで、この問題を改善していくことができるはずです。介護士の尊厳と利用者様の安全を守るために、一人一人が行動を起こしましょう。

介護事業所は介護士の尊厳、安全を守る義務がある!

介護事業所は介護士の尊厳、安全を守る必要があります。

介護現場は、身体的、精神的に負担が大きい職場です。厚生労働省の調査によると、介護職員の離職率は29.3%(2021年度)と、他の業種に比べて非常に高くなっています。この高い離職率の背景には、介護士の健康と安全が十分に守られていないという問題があります。

介護事業所は、労働安全衛生法に基づき、労働者を安全に働かせるための義務を負っています。具体的には、以下のような措置を講じる必要があります。

安全な作業環境の整備: 介護機器の安全点検、転倒防止対策、感染症対策など
健康管理: 労働者の健康状態の把握、定期健康診断の実施、ストレスチェックの実施
教育訓練: 安全衛生に関する教育訓練の実施、介護技術の向上のための研修
これらの措置を講じることで、介護士の健康と安全を守り、安心して働ける環境を作ることができます。

労働安全衛生法
第3条: 事業者は、労働災害を防止するために、必要な措置を講じなければならない。
第57条: 事業者は、労働者を安全に働かせなければならない。
第66条: 事業者は、労働者に、労働災害防止に必要な教育訓練を行わなければならない。

労働基準法
第36条: 使用者は、労働者に、健康及び安全を確保するために必要な措置を講じなければならない。
介護事業者には、これらの法令を遵守し、介護士の健康と安全を守るために積極的に取り組むことが求められます。

また、介護士自身も、自身の健康と安全を守るために、以下のようなことに注意する必要があります。
体調管理: 十分な睡眠と栄養をとり、健康な生活習慣を心がける
ストレス管理: ストレスを溜め込みすぎないように、適度に発散する
危険予知: 介護作業中の危険を予測し、事前に対策を講じる
労災保険の加入: 万が一、労働災害に遭った場合に備えて、労災保険に加入する

介護士は、高齢者の生活を支える重要な役割を担っています。介護事業所と介護士が協力し、安全で健康的な職場環境を作ることが、質の高い介護サービスを提供するために不可欠です。

参考資料
厚生労働省: 労働安全衛生法
厚生労働省: 労働基準法
中央労働災害防止協会: 介護事業における労働災害防止

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